トリックスターとは、神話的な人物類型といえるようなものの一つ。ここで神話的な人物類型といってみたのは、たとえば、英雄、賢者、女神、魔女などが世界各地の神話や伝承に登場するが、そのようないかにも神話や童話に出てきそうな典型の人物像の類型。人格のある顕著な性質を象徴している人物像。トリックスターもその人物像の類型の一つとして並列できる。
トリックスターは、神出鬼没の悪戯者、道化師、ペテン師、幼い魔術師であったり、とんでもく下らない幼稚なことばかりする愚者であるかとおもえば、英雄のような行為をするときもある、変幻自在のキャラクター。主に少年として描かれていることがおおいが、女装するときもあるし、もともと両性をもっているということもあれば、動物として描かれることもある。
具体的な例で有名なのは、ギリシャ神話のヘルメス、ローマ神話のメリクリウス、北欧神話のロキなど。
ヘルメスとメリクリウス(マーキュリー)はギリシャ文化とローマ文化の混交のなかで同一視されていった多神教の神。とりあえずヘルメスについてだけ書くと、ヘルメスは、ギリシャの伝令や旅の神。ゼウスと、ゼウス愛人の一人マイアとの間に、正妻であるヘラの目を盗んで生まれた。美少年であり、素早くて、ずる賢い悪戯者で、競争をしたりものを盗むのが大好き。ヘルメスの外見は少年的な姿で描かれることが多く、つばの広い帽子をかぶり、翼のついた靴かサンダルをはいている。その靴によって自由に空を飛ぶことが出来る。あるいは翼のついた帽子をかぶっていて、それで飛ぶ。先端に二匹の蛇が絡み合っている伝令の杖をもっていて、主神ゼウスから伝令の遣いを受けている秘書的な存在。生きている者の世界と死者の世界を行き来できるという特権をもっている。